草川信研究

 

童謡の作曲家として知られる草川信とその作品を紹介します。
彼は、童謡のほかにも歌曲、合唱曲、器楽曲、新民謡なども作曲しました。
この草川信について、もう少し詳しく知ってもらいたいと思います。彼の生涯については、まとまった伝記のようなものは出版されていませんが、萩原茂氏によるものや、信濃教育の草川信特集など、かなり詳しく書かれた文献はあります。いずれ1冊のまとまったものにまとめられることを期待したいと思います。
ここでは、生涯と作品については簡単に紹介するに留め、作品そのものを鑑賞できるようにしました。
まず、童謡と歌曲の演奏と楽譜を提供します。


童謡では、何といっても
 「夕焼け小焼け」(中村雨紅)が有名です。<ゆうやけこやけで日が暮れて>、ほかに
 「ゆりかごの歌」(北原白秋)<ゆりかごのうたを、かなりやが歌うよ>
 「春の歌」(野口雨情)<桜の花の 咲く頃は>
 「どこかで春が」(百田宗治)<どこかで春が 生まれてる>
 「風」(セーラ・ティスディール/西條八十訳)<だれが風を 見たでしょう>
 「汽車ポッポ」(富原薫)<きしゃきしゃ ぽっぽぽっぽ>
 「みどりのそよ風」(清水かつら)<みどりのそよかぜ>
などが良く知られています。童謡は全部で300曲に及びます


草川信の生涯(草川誠氏作成のものを元に)

 1893(明治26)年 長野県上水内郡長野町(現長野市)県町に生まれる
 1899(明治32)年 長野師範附属小学校に入学(6歳)
 1907(明治40)年 県立長野中学校入学(14歳)
 1912(明治45)年 長野市後町尋常高等小学校代用教員(19歳)
 1914(大正3)年 東京音楽学校甲種師範入学(21歳)
 1917(大正6)年 東京音楽学校卒業、東京都渋谷区長谷戸小学校訓導となり10年間勤める(24歳)
 1918(大正7)年 東京都渋谷区猿楽小学校兼務(25歳)
 1920(大正9)年 成蹊学園に就職(終身)、九頭竜繍画女学校(27歳)
 1921(大正10)年 「赤い鳥」童謡運動に参加(28歳)
 1924(大正13)年 東京府立第三高等女学校(現都立駒場高校・都立芸術高校)(31歳)
 1933(昭和8)年 護国寺童謡教室(現音羽ゆりかご会)会長(40歳)
 1934(昭和9)年 杉並区立家政高等女学校(現都立荻窪高校)、ポリドール社作曲専属(41歳)
 1935(昭和10)年 杉並児童楽園科教師(42歳)
 1948(昭和23)年 没(55歳)


作品の概観(楽譜集としてまとめて出版されたもの)

<童謡作品>
 草川信童謡作曲集(第1編〜第12編),昭和4(1929),京文社
 世界音楽全集(11,24),昭和5年(1930)昭和6年(1931),春秋社
 童謡唱歌名曲全集(第2巻,第3卷),昭和6年(1931),京文社
 「赤い鳥」童謡(第5,6,7集),大正10(1921),赤い鳥社
 草川信童謡全集(第1輯),昭和6年(1931),日本唱歌出版社
 新作童謡集(第1,第2),昭和20年(1945),開成館
<歌曲>
 世界音楽全集(17,27,89),昭和5年(1930),春秋社
 白眉創作歌曲集(作品集第1編),昭和23年(1948),白眉社
 月に飛ぶもの,大正15年10月(1926),ARS(草川作品のみ)
 草川信リードアルバム(第1,2編),昭和4年(1929),共益商社書店
 童謡唱歌名曲全集(第5,8巻),昭和7年(1932),京文社
 汀川の巻,昭和20年(1945),(未出版,草川作品のみ)
<合唱曲>
 世界音楽全集(9),昭和5年5月(1930),春秋社
 童謡唱歌名曲全集(第7巻),昭和7年(1932),京文社
<民謡曲>
 世界音楽全集(13),昭和5年(1930),春秋社
<器楽曲>
 日本ヴァイオリン楽譜集,昭和17年(1942),白眉出版社(草川作品のみ)


○音○楽譜○

♪童謡作品の演奏(2006.7.11録音)
 (歌:金谷日菜子,長山唯,石村紘子,笠間千絵,中谷彩子,藤永奈津子/ピアノ:千田恭子)

ゆりかごの歌(北原白秋)
 ゆりかごのうたを カナリヤがうたうよ ねんねこねんねこねんねこよ
 ゆりかごのうたに びわのみがゆれるよ  ねんねこねんねこねんねこよ
 ゆりかごのつなを きねずみがゆするよ ねんねこねんねこねんねこよ
 ゆりかごのゆめに きいろいつきがかかるよ  ねんねこねんねこねんねこよ

春の唄(野口雨情)
 桜の花の咲く頃は うららうららと日はうらら ガラスの窓さえ皆うらら 学校の庭さえ皆うらら
 河原で雲雀の鳴くころは  うららうららと日はうらら ちちやの牛さえ皆うらら 鳥家の鳥さえ皆うらら
 畑に菜種の咲く頃は うららうららと日はうらら 渚の砂さえ皆うらら どなたの顔さえ皆うらら

どこかで春が(百田宗治)
 どこかで「春」が生まれてる どこかで水がながれ出す
 どこかで雲雀が啼いている どこかで芽の出る音がする
 山の三月東風吹いて どこかで「春」がうまれてる

みどりのそよ風(清水かつら)
 みどりのそよ風いい日だね ちょうちょもひらひらまめの花 なないろばたけに妹の つまみ菜積む手がかわいいな
 みどりのそよ風いい日だね ぶらんこゆりましょ歌いましょ 巣箱の丸窓ねんねどり ときどきおつむがのぞいてる
 みどりのそよ風いい日だね ボールがぽんぽんストライク 打たせりゃ二塁のすべり込み セーフだおでこの汗をふく
 みどりのそよ風いい日だね 小川のふなつりうきが浮く 静かなさざなみはね上げて きらきら金ぶなうれしいな
 みどりのそよ風いい日だね 遊びにいこうよ丘越えて あの子のおうちの花畑 もうじきいちごも摘めるとき

 

♪歌曲作品
 歌曲集「月に飛ぶもの」(詩:北原白秋6曲,川路柳虹5曲)より北原白秋の6曲の演奏と楽譜

<演奏>
 月に飛ぶもの
 月の光がさしました。枯れた葡萄に、日時計に。
 月の燻(いぶ)しになりました。ちらばる色も、縫う影も。
 月に消え消え飛ぶものよ。ほの紫の 連れ鳥よ。
 月の遥かになりました。見果てぬ夢よ。あの頃よ。

 野焼きのころ
 山は野焼きか、また春寒か、逢はず帰るか、夜のふけか。
 野火のちょろり火 一山越して、燃えて行たやら、消えてやら。
 野火の火立の、薄れた頃か、明けの山鳥、ほろと啼く。

 夕日はなやかに
 夕日はなやかに、こほろぎ啼く。
 あはれ、ひと日、木の葉ちらし吹き、荒みたる風も落ちて、
 夕日はなやかに、こほろぎ啼く。

 なわすれぐさ
 面“巾白”(おもぎぬ)のにほいに洩れて、 (:巾白で1文字)
 その眸(ひとみ)すすり泣くとも、―
 空いろに透きて、葉かげに
 今日も咲く、なわすれの花。

 椎の花
 木の花はほのかにちりぬ。
 日もゆうべ、椎の片岡、
 影さむみ、薄ら光に
 君泣きぬ、われもすがりぬ。
 髪の香か、目見のうるみか、
 衣そよぎ、裾(すそ)にほそぼそ、
 蟲啼きぬ、― かかるうれひに。

 ああ、かくて、君よいくとき、
 かく縋(すが)り、かくや泣きけむ。
 そのかみか、いまか、うつつか、
 さて知らじ、さきの世のゆめ。

 かへりみ
 みかへりぬ、ふたたび、みたび、
 暮れてゆく幼(おさな)の歩(あゆみ)
 なに惜みさしもたゆたふ。
 あはれ、また、野辺の番紅花(さふらん)
 はやあかきにほひに満つを。

<楽譜>(制作中)
 これらの曲が掲載された『叙情楽譜 月に飛ぶもの』(ARS出版,大正15年発行)に基づいて楽譜を制作します。とりあえず、表現や強弱の記号は省略して音符のみで、順次作成します。

【pdfファイル】

 月に飛ぶもの

 野焼のころ

 夕日はなやかに

 なわすれぐさ

 椎の花

 かへりみ


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